2023年01月17日 08:57 #エンゲージメント向上
企業の採用競争力や従業員エンゲージメントを高めるためのポイントとして「EVP(従業員価値提案)」の作成と周知に力を入れる企業が増えています。「企業が従業員へ提供する価値」として挙げられる内容は幅広く、EVPを作成する際には自社の現状と従業員・求職者のニーズをしっかりと分析し、理解を深めておく必要があります。
この記事では、企業がEVPを発信することで得られるメリットとともに、EVPの作成手順や注意点についてわかりやすく解説します。
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EVPとは「Employee Value Proposition(従業員価値提案)」の略称で「企業が従業員へ提供する価値」を意味します。この価値には、給与や福利厚生のほか、職場環境、キャリア支援、ワークライフバランス、ミッションなど幅広い内容が含まれます。
EVPが広まった背景には、少子化や経済の停滞により、終身雇用制度や年功序列制度の維持が困難になってきていることが存在します。労働力不足に加え、人材の流動性も高まっている現代においては、従業員や求職者に選ばれるために、企業が提供できる価値を発信する必要性が増しているのです。
従業員が求める価値を考え、企業が提供できるものを言語化・視覚化して発信することで、企業イメージやエンゲージメントが高まり、人材獲得や離職防止につながることが期待できます。
EVPを発信することで企業が享受できるメリットには以下が挙げられます。
企業が報酬やキャリア、生活の質まで幅広い価値を提示し、従業員がそれに納得して働くことで、従業員エンゲージメントの向上につながります。また、EVPを作成する際におこなう従業員へのアンケートやヒアリングにより、不足する点を改善していく企業の姿勢を見せることは、自社の魅力を再確認したり、愛着や信頼を高めたりする機会となるでしょう。
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自社の魅力を明確にし、求職者にわかりやすく発信することで、競合他社との差別化を図れることもEVPの大きなメリットです。自社にしか提供できないオリジナルの価値や、他社と比較して質の高い価値を提示できれば、採用競争力が高まり、優秀な人材を獲得しやすくなります。
手当や福利厚生、キャリア支援の充実などを価値として提示することで、従業員の働きがいやモチベーションが高まり、離職の防止と定着率の向上が期待できます。また、EVP作成時のヒアリングで離職を引き起こしている要因を発見し、現行制度の見直しや改善をおこなうことで、離職率の抑制につなげられます。
作成したEVPはコーポレートサイトなどで公開し、求職者だけでなく顧客や取引先などのステークホルダーにも自社の魅力を伝えることがポイントです。従業員や求職者にとって魅力的な企業は、優秀な人材が集まり長期的な成長が期待できると考えられ、企業のブランディングになります。
EVPの一つとして、自社が大切にするビジョンや社会に果たす責任、またそれを達成するための価値観を示し、従業員のやりがいや誇りにつなげる企業もあります。経営理念や行動指針をEVPとリンクすることで、自社の方針や価値観が従業員に浸透しやすくなり、組織が掲げる目標や共通の考え方を定着させることができます。
EVPの作成にあたっては、自社の現状や従業員・求職者が求めるニーズを理解することが不可欠です。さまざまな分析をおこなったうえで、自社が提供できる価値とあわせて経営方針やビジョンを提示し、メリットにつながるEVPを考えましょう。
EVPを作成する基本的な手順は以下のとおりです。
まずはEVPとして設定すべき項目について理解しましょう。従業員にとって価値となり得る内容には、次のようなものが挙げられます。
● 各種手当やボーナス、昇給などの給与
● 健康や生活の質を高める充実した福利厚生
● ワークライフバランスを考えた勤務体制
● 有給休暇や特別休暇などの休暇制度
● 透明性・公平性が高い人事評価制度
● 学びの機会を提供するキャリア開発支援
● 健康やキャリアに関する相談窓口
● やりがいを感じられるミッションやバリュー
企業が提供する価値は、従業員や求職者が「ずっと同じ企業で働きたい」「この企業に入社したい」と思えるような内容であることがポイントです。
従業員や求職者が求めているものを正しく理解するために、アンケートやヒアリングを実施し、得た情報をもとにニーズの分析をおこないます。何に不満がありどのような改善を求めているのか、従業員の率直な意見を届けてもらうには、匿名でアンケートをとるなど企業に忖度せず回答できる工夫が必要です。
自社の強みや弱みを把握するには、従業員が自社のどのような部分に価値を感じているか、求職者のニーズに合致する部分や足りない部分はどこかなど、さまざまな視点から分析をおこないます。また、競合他社が設定しているEVPを研究し、自社と比較して優れている点・劣っている点を考えるのもよいでしょう。
自社の弱みを知って改善を図り、いずれEVPとして示せるよう取り組みを進めていくことは、従業員満足度やエンゲージメントの向上に大きく寄与します。すぐに価値として提供できる強みの部分だけでなく、改善の余地がある弱みの部分についても把握しておくことがポイントです。
自社の強みと従業員にヒアリングしたニーズを照らし合わせ、実際に提供できているものや制度の改善などでこれから提供できるものを考え、EVPを設定します。【1】の項目以外にオリジナルの価値として提供できるものを加えたり、経営方針や将来の展望を視野に入れて項目を絞り込んだりすることも効果的です。
ただ単に提供できる価値を提示するのではなく、従業員の価値観の統一や求職者とのミスマッチの防止、社外に示したいビジョンなどを考えて設定することが大切です。
EVPの設定が完了したら、コーポレートサイトや採用サイト、社内掲示板などに掲載し、社内外に広く周知します。評価制度や勤務制度、求人広告や面接などにEVPの内容を反映させ、よりよい価値を従業員や求職者に提供できるよう取り組みを進めましょう。
EVPは発信して終わりではなく、定期的に効果を測定し、時代や状況にあわせてアップデートしていく必要があります。EVPがどんなに魅力的な内容であっても、その価値を享受する従業員や求職者にしっかりと伝わっていなければ意味がないため、現在の発信方法が適しているかどうかもあわせて分析しましょう。
EVPを作成する際は、EVPで示した価値と従業員の認識との間にギャップが生じないよう注意しましょう。EVPは人材採用において効果を発揮する重要なポイントですが、求職者に選ばれる企業であることだけを意識してEVPを設定すると、理想ばかりが先行し現実と乖離してしまう可能性があります。企業文化や価値観を体現する従業員にとって、納得できるEVPであることが最重要です。
また、従業員や求職者のニーズに応えるために、現在は不足がある部分も制度の導入や改善を実施し、EVPとして提示することがあるでしょう。このとき期待されることすべてを一度に実現しようとすると負担が大きく、また競合他社との差別化を図るうえでも独自性のない項目を増やすことで得られる効果は少ないと考えられます。
まずは自社の現状から考えて実現性や優先度が高いもの、自社ならではの価値として独自性が高いものなど、項目を絞り込んで設定することが大切です。
EVP(従業員価値提案)とは「企業が従業員へ提供する価値」のことです。従業員や求職者のニーズを踏まえた企業独自の価値を設定し、ステークホルダーも含めて社内外に広く周知することで、従業員エンゲージメントの向上や採用競争力の強化、企業ブランディングなどのさまざまな効果が期待できます。
EVPを作成する際は、自社の強みと弱み、従業員や求職者が求める価値をしっかりと把握することが重要です。自社の分析において、より効果的な調査をおこなうためには、外部のサービスを利用するのも一つの方法です。
クラウド型社員意識調査の「パソナエンゲージメント」は、企業の状態把握から施策の立案までを短期間で実行できるサービスです。EVP作成時に自社の強みと弱みを明確にしたり、EVP運用における効果検証や改善に活用したりすることができます。従業員エンゲージメントや採用競争力の向上に貢献するEVPを作成するために、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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