2023年02月21日 08:00 #エンゲージメント向上
「ポジティブ・アクションに取り組んでいるのに思うように進まない」「社内にイノベーションや成長を妨げる雰囲気がある」など、会社をよりよくするために業務に取り組むなか、目に見えない障壁を感じることは少なくないでしょう。もしかしたら、その原因は「アンコンシャスバイアス」かもしれません。
アンコンシャスバイアスとは、無意識の偏見や思い込みを指します。社員一人ひとりが持つアンコンシャスバイアスは、職場の意思決定や人間関係などさまざまなことに影響します。
この記事では、アンコンシャスバイアスの具体例、問題となる理由、対処法を解説します。ポジティブ・アクションに関する記事はこちらからご覧ください。
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アンコンシャスバイアス(Unconscious bias)とは「無意識の偏見」や「無意識の思い込み」を意味する言葉です。次のような例があります。
○血液型から相手の性格を想像する
○性別・世代・学歴・出身国・肌の色などで相手を判断する
○性別で得意不得意などを判断し任せる仕事や役割を決める
○「親が単身赴任」と聞いて父親を思い浮かべる
○男性から育児や介護休業の申請があると「奥さんは?」ととっさに思う
○子育て中の女性に重要な仕事や転勤を伴う仕事の打診はしないほうがいいと思う
○自分にはバイアス(偏見、先入観)はないと思う
人は過去の経験や見聞きしたことをもとに予測したり判断したりするため、誰もが潜在的にアンコンシャスバイアスを持っていると言われています。
しかし、人によって経験や価値観はさまざまであり、個人のアンコンシャスバイアスが誰にとっても正しいものであったり、実態に即したものであったりするとは限りません。
アンコンシャスバイアスによる偏った言葉や行動は、知らないうちに相手を傷つけたり、キャリアに影響を及ぼしたり、自分や他人の選択肢や可能性を狭めることがあります。
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アンコンシャスバイアスは日常のさまざまな場面に潜んでいます。特に職場では、以下のようなアンコンシャスバイアスに触れる機会が多いでしょう。
・事務作業は女性の仕事、商談や交渉事は男性の仕事
・女性は結婚・出産を機に退職するもの
・男性は家庭を持っても仕事第一であるべき
・組織のリーダーは男性が向いている
・女性は男性のサポートにまわるべき
・男性は気をつかう仕事やきめ細かな作業は向いていない
・女性は論理的に考えられず管理職に向かない
・子育て中の女性には負担の少ない仕事を割り当てる
・育児休業は母親がとるもので父親がとるものではない
・雑用や飲み会の手配は若手の役割
・ゆとり世代は根性がない
・昭和生まれは頭が固い
・年配社員はパソコンが苦手
・体育会系だからまじめに働くはず
・地方の出身者は価値観が古い
・大企業での経歴を持つ中途採用者は仕事ができるだろう
・意思や能力ではなく年齢や性別で配置・昇進を決める
・外国出身社員に外国語を使う業務しか任せない
・気に入った部下の失敗は大目に見る
・残業や休日出勤が多い社員の方が、熱意がある
・自分がこうだったから他人もこうであるべきと考える
・自分と似ていると感じる人を優遇する
・介護や育児と仕事の両立はできないから介護中・育児中の人は採用しない
アンコンシャスバイアスは、それ自体は悪ではないものの、社会や職場のさまざまな場面でネガティブな影響をもたらすと考えられています。
性別や年齢、出身国などにより「こうあるべき」「こうに違いない」と決めつけることは、一人ひとりが尊重しあいながら成長していく組織を目指すダイバーシティ&インクルージョンを妨げる原因となります。
日本でも、男女共同参画の進展が十分でない原因の一つにアンコンシャスバイアスが認識されています。令和4年の内閣府男女共同参画局の調査では「育児期間中の女性は重要な仕事を担当すべきでない」と考える人が男女ともに約3割、「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」と考える人が男女ともに約4割にものぼります。
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人事評価や人材配置、企業の方針を決定する人物にアンコンシャスバイアスがあると、公平な評価や意思決定ができない可能性があります。
男性候補者と女性候補者の能力や実績が同じでも、女性であることや子育て中を理由に男性の管理職登用を決める、会議で革新的な意見が出ても新入社員であることを理由に取り上げないなどの傾向がある場合、アンコンシャスバイアスが企業の成長を妨げていると考えられます。
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「既婚女性なら家事育児を優先すべき」「子どもの体調不良で男が休むのはおかしい」などの無意識の偏見は普段の態度や会話にあらわれ、自覚なく相手を不快にさせ人間関係を悪化させたり、部下のモチベーションを低下させたりします。
また、アンコンシャスバイアスにより妊娠・子育て中の女性を閑職に異動させたり、男性からの育休取得希望に否定的な言動を見せたりすることはハラスメントに相当します。
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アンコンシャスバイアスは、他者だけでなく自身に対してもネガティブな影響を与えます。
年齢や性別、未婚か既婚かなどにより、挑戦したいことや学びたいことがあっても「〇〇だからこうあるべき」「〇〇だからきっと無理だ」と無意識に判断して、成長やキャリア形成を妨げてしまうからです。
ここでは、アンコンシャスバイアス解消のための対処法を解説します。
自身のアンコンシャスバイアスに気づき、悪影響を及ぼさないようにするためには、まずは普段の自分の考えや言動に、次のような言葉がないか振り返ってみましょう。
・「普通そうだ」「たいていこうだ」…価値観の決めつけ
・「どうせ無理だ」「できるわけがない」…能力の決めつけ
・「そんなはずはない」「こうに決まっている」…解釈の押しつけ・拒否
・「こうあるべきだ」「こうでないとダメだ」…理想の押しつけ
思い当たるものがある場合は、アンコンシャスバイアスが影響している可能性があります。
決めつけや押しつけをする前に、一人ひとりと対話をし、相手を尊重する姿勢を見せることが大切です。
アンコンシャスバイアスにより相手を不快にさせた場合、そのサインは相手の表情や態度にあらわれます。
・急に表情が曇った
・声のトーンが変わった
・話題を変えられた
・視線をあわせなくなった
・キーボードを打つ音が大きくなった
なにげない雑談や業務中の会話でこのサインが見られたら、違和感をそのままにせず、自身の言動を振り返りフォローを心がけましょう。
アンコンシャスバイアスに気づき対処することは簡単ではないため、継続して自分の言動や周囲のサインへ意識を向けることが大切です。
自身が感じた違和感、相手の感情の変化などを一定期間メモに取るとアンコンシャスバイアスによる影響に気づくことができ、対処を考えられます。
・会話の最中に相手の表情が曇った
⇒自身のどのような言動によるものか振り返る
・後輩から指摘を受けてムッとした
⇒自分の方が正しいという思い込みがあるかも
・この提案はどうせ無理だろうと考えてあきらめた
⇒なぜ無理と思ったのか、そこにアンコンシャスバイアスはないか
・配慮のつもりで同僚の仕事を引き取ったが思い込みだったかも
⇒次からは本人に確認してみよう
無意識の偏見や思い込みであるアンコンシャスバイアス。それ自体は悪ではないものの、職場内ではアンコンシャスバイアスによる判断や意思決定が、組織の公平性や多様性を妨げたり、人間関係悪化の原因となったりするリスクがあります。
全社員に対処法を浸透させるには、気づきの場、知識を深める場としての研修などを実施することが望ましいでしょう。アンコンシャスバイアスによって、配慮のつもりでも相手のキャリアを妨げていたり、他者や自分の可能性を狭めたりしていることに気づく社員が増えると、お互いの意思を尊重しあい、公平であろうという社風が醸成されていきます。
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