2024年01月30日 08:30 #人事トレンド #エンゲージメント向上
モチベーションが高く、自律的に働く従業員の多い組織は企業の理想でしょう。しかし、現実には、従業員のモチベーション低下に悩む企業が決して少なくありません。
企業と従業員との関係性はここ20年でかなり変わりました。現状も、昔ながらの人事の仕組みのままの企業が多いのですが、時代に合わせて人事の在り方をアップデートしていく時期にきているといえるでしょう。
本記事では、従業員のモチベーション向上や人材育成に有効と注目されている「モチベーション3.0」という概念を解説します。
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モチベーション3.0は、米国の文筆家であるダニエル・ピンク氏が2009年に提唱した概念です。
モチベーションとは「動機付け」という意味であり、何か行動を起こしたり、行動の方向性を決めたりする要因やプロセスを指します。
モチベーションについては、これまでも心理学領域を中心に研究が進んできましたが、モチベーション3.0は、これまでのモチベーション理論に比べて内発的な要素が重視されている点が特徴です。仕事における意味や目的の追求、自己成長、自己決定の尊重などに重きがおかれています。
従業員の幸福、満足度向上、組織の持続的成長という視点も強いため、現代の企業にとって有効なモチベーション理論として注目されています。
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ダニエル・ピンク氏は、モチベーション理論を「モチベーション1.0」「モチベーション2.0」「モチベーション3.0」に分類しました。従来のモチベーション理論である1.0~2.0の限界を指摘し、モチベーション3.0に移行すべきと提唱しています。
モチベーション1.0は、人の生理的欲求にもとづく動機付けのことです。生きていくうえでの原始的な欲求のことで、例えば、生存することや安全に暮らすことなどです。ビジネス領域では、仕事は報酬を得るための手段になります。
モチベーション2.0は、外発的動機づけ、いわゆる信賞必罰に基づくモチベーションを指します。企業であれば報酬や昇進、昇格などによって人は意欲を高めて向上するという考え方で、近代の企業経営の基本アプローチです。
モチベーション理論は、マズローの5段階欲求説とも多くの共通点があります。モチベーション1.0は「生理的欲求」「安全の欲求」、モチベーション2.0は「社会的欲求」「承認欲求」、モチベーション3.0は「自己実現欲求」に該当するでしょう。
ただし、モチベーション3.0は、5段階欲求説を包含したうえで現代のビジネス環境に適したかたちで拡張・再構築されており、自己決定などの内発的動機がより重視されています。
モチベーション3.0の大きな要素は「自主性」「成長」「目的」です。この3つの要素が満たされることで、従業員は内発的動機付けを高めることができると考えられています。以下に3点の概要を記載します。
自主性:自分の活動について自分の意志で方向性を決定し、コントロールすること。会社の仕事であれば、仕事上でどのような目標をたて、課題についてどのように取り組んでいくかを、自分で考えて実行することを指します。
成長:成長すること。例えば、スキルの向上や知識の会得、これまでより大きな仕事をこなせるようになるといったビジネスの総合力向上が該当します。マネジメント力やリーダーシップが身につくなど人間性の成長も含まれます。
目的:仕事の目的に価値を感じられること。単に企業の売り上げなどの経済的な利益追求だけでなく、自分の仕事が顧客の役に立ち、何らかの社会課題の解決につながっていること。企業のパーパスに共感することともいえます。
モチベーション3.0では、個人の成長や個人が仕事の意味や価値を見出すことが特に重要視されています。企業がこのような個人の自己実現を重視すべきという意見は、一見、組織にプラスがあまりなく、個人の問題のように感じられるかもしれません。
しかし、従業員が企業の価値観に共感して働いたり、自分の目的のために働いたりすることで、長期にモチベーションを維持できると、結果的に企業のイノベーションや成長につながるというメリットがあります。
モチベーション3.0では、売り上げを上げるという目的の上位概念にある「企業のパーパス」が明確になります。そのため一人ひとりの従業員が、自分の仕事の本質的な目的を理解して働くことができます。
モチベーション2.0は合理的なマネジメントですが、報酬や評価というインセンティブのみでは個人や部署単位の損得に目が向きがちです。モチベーション3.0では、協力しあう雰囲気が生まれるため、組織にダイナミズムが出てきます。
報酬などの外発的動機付けは、人によっては手に入れると意欲が低下するなど長時間持続しないケースが出てきます。年収がアップしても、しばらくするとそれが当たり前になるような現象が典型的です。
一方、内発的動機は、自分がたてた目標を達成したことによる自分の成長などに根差しているため長期間持続する傾向があります。自己効力感を高め、目標を達成することでさらなる成長意欲が出てくるため、企業の活性化にもつながります。
モチベーション2.0のような信賞必罰にもとづいた世界では、従業員はマイナスの評価をされないことや組織の評価基準にのっとり自分の評価を高めることにフォーカスします。評価されない仕事に意義を感じなくなるので、新しいアイデアを生かすことにも消極的になりがちです。モチベーション3.0は、個人の決定や個人の成長に焦点をあてるため、仕事上の創意工夫ができるようになり、結果として企業のイノベーションにも寄与します。
モチベーション3.0を実現するには、組織内に従業員の内発的動機付けを高める環境が必要になります。部署によってはすべて取り入れることが難しいケースもありますが、以下のポイントに留意して人事施策に取り入れてみましょう。
まず、前提としてモチベーション1.0と2.0が満たされている必要があります。従業員の生活が安定する水準の報酬があること、理不尽なリストラがないこと、努力や成果が報酬や昇進などに反映される環境であることです。
一般に、命令されて何かをおこなう場合と自主的におこなう場合では意欲が異なります。組織目標の範囲内であっても、可能な限り自分で目標を設定してもらうことがポイントです。当事者意識を持つことができるため、意欲も高まりやすくなります。
裁量権の大きさは仕事への熱意や活力にプラスであることが研究でも報告されています。最終的な成果に合意したら、プロセスについては極力裁量権を広げましょう。もちろん、丸投げではなく適切なタイミングでの確認は必要です。
リモートワークやフレックスタイム制など、働き方の選択肢を増やすことも有効です。ワークライフバランスが整い仕事に集中することができます。時間や場所が自由になると、同僚との時間に価値を感じられ、かえってコミュニケーションも活性化します。
評価制度もモチベーション3.0が機能するようにルールを変化させる段階にきているでしょう。数値的な成果だけでなく、自発的な行動ができる人材や企業全体にとってよい提案や行動ができる人材を評価するなど、基準を見直すことが必要です。
モチベーション3.0は、ここ数年日本でも注目されている新しい概念です。これは、モチベーション1.0~2.0の限界が認識され始めたことが影響しています。キャリア自律やリテンション、エンゲージメント向上にもつながるため、これからの人材育成において不可欠な考え方だといえるでしょう。
パーパスの明確化、従業員の裁量権の拡大、目標管理制度の見直しなども必要であり、実現するハードルが高い理論でもありますが、導入できるところから取り組んでいきましょう。
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高齢者雇用安定法の改正、いわゆる「70歳就業法」の施⾏に伴い、70歳までの就業機会の確保が企業の努⼒義務となる中、ミドルシニア社員のキャリア形成に対して、⼀⼈ひとりの多様な価値観を理解し、その能⼒やスキルを継続的に開発していく支援が求められています。
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