2023年04月25日 08:30 #人事トレンド
もともとはシステム関連の用語である「フィードバック(feedback)」。しかし、現在は「業務上の評価に関して意見交換する人材育成の手法」として浸透し、ビジネスの場でも広く使われるようになりました。
ところが、実際にフィードバックをおこなうと、評価者からの指摘は改善点に偏ることが多く、被評価者の意欲を削ぐという問題が起こりがちでした。このような問題点を解決するのが「ポジティブフィードバック」であり、被評価者の仕事に対するモチベーションを高め、企業全体によい影響をもたらす評価手法として注目を集めています。
この記事では、ポジティブフィードバックの意味、具体的にどのようなものか、その効果や進め方、活用例についてわかりやすく解説します。
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ポジティブフィードバックとは、被評価者のポジティブな側面に着目し、前向きな言葉で指摘する評価方法です。よい面に注目した評価をおこなうことで、被評価者の承認欲求を満たし、自己肯定感を高める効果があります。
ネガティブフィードバックとは、被評価者のネガティブな側面に着目し、否定的な表現で指摘する評価手法です。ネガティブな指摘によって被評価者の反骨心を刺激して成長を促すものであり、よい面に着目してモチベーションを引き上げるポジティブフィードバックとは正反対の手法といえます。
ネガティブフィードバックは、被評価者の成長や課題解決力の向上を促したいときに有効な手法です。一方で、問題点や失敗ばかりを指摘すると、被評価者の意欲を低下させてしまうおそれがあることに注意する必要があります。
ポジティブフィードバックは、多様な価値観や市場の変化にも対応しやすく、多様性が重視され変化が激しい現代社会に適した評価手法といえます。
近年は年齢や経験、国籍などが異なる多様な人材の登用が進み、評価者によるフィードバックもこれまで以上に難しくなっている状況です。相手の成長を促すためとはいえ、否定的な表現で指摘するネガティブフィードバックを用いると、被評価者からの理解を得られにくくなることがあります。このため、多様な被評価者に対応するには、前向きな表現で相手のモチベーションを高めるポジティブフィードバックが適しています。
ポジティブフィードバックを実施する効果やメリットには以下が挙げられます。
ポジティブフィードバックをおこなうと、被評価者は自分のよい面に気づき、得意分野を伸ばしやすくなります。また、自分では気づけなかった自らの強みも自覚するようになるため、その能力が必要な場面で効果的に発揮されることが期待できます。ポジティブな側面を評価することは、被評価者の成長のきっかけとなるでしょう。
ポジティブフィードバックは被評価者に対する「承認」となるもので、被評価者が「上司は自分を否定しない」と捉えることは上司に対する信頼につながります。ポジティブフィードバックを通じて上司と部下との間に信頼関係が構築され、円滑なコミュニケーションをとりやすくなるでしょう。
ポジティブフィードバックによる上司からの前向きな言葉は、被評価者の業務に対するモチベーションを高める効果があります。加えて、ポジティブな指摘を受けることにより、被評価者の自主性・主体性が伸長することも期待できます。
ポジティブフィードバックにはさまざまなメリットがある一方で、単に「褒める」だけになってしまうと、被評価者の成長を妨げるおそれがあることに注意が必要です。
相手のよい面に目を受けるポジティブフィードバックは、被評価者にとってポジティブな内容が中心であり、褒めることも多くなります。しかし、明確な根拠もなくただ褒めるだけの評価では、納得感がなかったり現状に満足させてしまったりと、被評価者の成長につながりません。ポジティブフィードバックをおこなうのであれば、被評価者の優れた点や強みについて客観的な根拠を持って説明し、納得感のある評価にすることが重要です。
ポジティブフィードバックを効果的に進めるためのステップを以下にまとめました。
まずは被評価者が目指すべき目標の設定をおこないます。その際は被評価者の現状を把握することから始め、ハードルの高い無理な目標ではなく、本人の現状に沿った達成可能な目標を立てることを意識しましょう。
ポジティブフィードバックでは、目標達成に向けたプロセスのなかでの被評価者の動向を確認し、どのような行動がよかったのか具体的にフィードバックします。ポジティブな評価であっても、その内容が漠然としていては何がよかったのか被評価者は認識できません。このため、根拠を明確にしたうえでフィードバックをおこなうことが重要です。
フィードバックは到達点ではなく、次のステップに向けた新たなスタートとなります。これから被評価者にどのような成果を目指してほしいのか、さらなる伸長を目指して評価者・被評価者の間で話し合い、評価内容の確認をおこないます。よい点を伝えるだけでなく、評価を踏まえた今後の展望について互いに共有することが重要です。
加えて、ポジティブフィードバックでは経営戦略の視点から、被評価者に対し「期待していること」を伝えるのも有効です。被評価者は組織における自分の立ち位置がわかり、これから組織にどう貢献できるのか主体性を持って考えられるようになります。このような自主的な姿勢が被評価者を成長させ、ひいては組織の成長にもつながっていくのです。
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資料ダウンロード | 社会人2年目の実態調査 社会人2年目の実態調査2023 -若手社員は何を求めて働いているのか-
本調査では、社会人2年目(2022年入社)の彼らに新入社員研修を振り返ってもらい、彼らは新入社員研修をどのように捉えていたか、実務で役立った研修や受講の有無に関わらず不足していると感じている知識やスキルは何か、彼らが仕事をする上で重視していること、テレワーク導入・未導入、男女での違いなど若者の本音が見えてくる調査結果となりました。
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ある事例をもとに、ネガティブフィードバックとポジティブフィードバックそれぞれの例文を考えてみました。同じ事例に対するフィードバックでも、評価者が持つ視点によってフィードバックの内容は大きく変化します。
営業部に配属されたAさんは中途入社したばかりの28歳です。前職も営業職であったものの、現在の職場とは異業種であることから、他の営業メンバーと比べて経験不足は否めません。このような状況下で年間を通じて業務に従事してきましたが、目標達成率は90%で未達の結果になってしまいました。
しかし、新規顧客への営業件数はトップであり、Aさんが熱心に業務に取り組んできたことがうかがえます。業務に向かう姿勢は前向きですが、まだ経験が少ないために、成約数が伸び悩んでいると考えられます。
「Aさんは今期の目標が未達となっています。この原因はどこにあると思いますか?新規顧客への営業件数はチーム内でトップですが、契約に結びついていません。成果を出すためには何が足りないと思いますか?」
「次期も未達にならないよう、危機感を持って取り組んでください。」
ネガティブフィードバックでは「目標未達であること」や「契約に結びついていないこと」に着目し、その原因を把握し改善につなげることを促しています。評価内容は厳しいものになりがちですが、相手の人格を否定するような表現は避け、期待しているからこその評価であると示すことが大切です。
「今期のAさんの目標達成率は90%ですが、不慣れな環境のなかで1年目から粘り強く取り組んでくれたと思います。特に、新規顧客に対する営業件数はチーム内でトップとなりました。地道な努力を重ねられていますね。」
「2年目以降の課題としては、顧客との信頼関係を構築し、いかに契約につなげていくかにあると思います。先輩の営業手法を参考にしたり、アドバイスを求めたりしながら、Aさんの手法をブラッシュアップしてみてください。」
ポジティブフィードバックでは、Aさんが置かれている状況を理解したうえで、地道に取り組んできたプロセスを評価しています。目標未達ではあるものの、Aさんが業務に取り組む姿勢を評価し、モチベーションの向上につなげています。また、ポジティブな言葉を伝えるだけでなく、今後の課題や具体的なアプローチについて共有し、Aさんの成長を促す内容となっていることもポイントです。
ポジティブフィードバックとは、被評価者のよい部分を前向きな言葉で評価する手法です。ポジティブフィードバックを適切に活用すると、被評価者の能力向上に資するだけでなく、モチベーションの向上や円滑な人間関係の形成にもつながります。
ただし、目的が漠然としたまま、根拠のないフィードバックをおこなっても効果は上がりません。今回ご紹介した進め方や活用例を参考にして、被評価者の成長につながる効果的なフィードバックを実践することが重要です。
また、ポジティブフィードバックの取り組みは、社員のエンゲージメントを測定・分析することで効果をはかることができます。
クラウド型社員意識調査の「パソナエンゲージメント」は、組織の状態把握から効率的な施策の立案までを短期間で実行できるよう支援するサービスです。5万名超のデータベースとの比較による客観的な分析で、効果を発揮できる施策を打ち出し、社員の労働意欲の向上に役立てられます。
ポジティブフィードバックの取り組みを始めるに際は、一緒に導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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関連サービス:クラウド型社員意識調査『パソナエンゲージメント』
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