2023年11月22日 08:30 #セカンドキャリア支援
現代はVUCAの時代と呼ばれる、変化のスピードが非常に速く、未来予測が困難な時代です。このような時代は、企業にも迅速かつ柔軟に変化に対応できる人材が必要となります。指示待ちではなく自ら考えて動ける人材、主体的にキャリアプランニングしていける自律型人材の育成が急務だといえるでしょう。
2022年時点の総務省の調査によると、今や労働力人口の約42%を45~65歳未満のミドルシニア世代が占めます。したがって多くの企業は、ミドルシニア世代にいかに能力を発揮してもらうか、自律的に動いてもらえるかが事業成長に大きく影響すると考えられます。
本記事では、自律型人材の意味やミドルシニア世代を自律型人材に育成するメリット、具体的な施策を紹介します。
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自律型人材とはどのような人材か解説します。
自律型人材とは、自分の意思で考えて能動的に行動できる人材を意味します。このような人材は常に指示を仰がずとも自分で適切な判断をして行動できるため、パフォーマンスが高い特徴があります。自律型人材の対義語は依存型人材であり、いわゆる指示待ち人材を意味します。
「自律」とは、周りの人との調整をおこないつつ、自らの意思に基づいて行動できることを意味します。「自立」とは独力で仕事をこなせたり、経済的に独り立ちできたりすることを意味します。
自立心は誰にとっても重要ですが、組織はチームで何かを成し遂げる必要があるため、企業は自律型人材の育成を意識することが大切です。
キャリア自律とは、従業員が継続的に自らのキャリアを計画し、環境の変化も踏まえながら、主体的にキャリア構築を進めることです。
2000年代前半から学校にキャリア教育が取り入れられたため、若い世代は比較的キャリア自律を意識していますが、ミドルシニア世代はそのような教育を受けておらず、キャリアを会社主体で考える傾向があります。そのため、現代ではミドルシニア世代のキャリア自律の促進が多くの企業の課題となっています。
自律型人材が必要とされてきた背景を解説します。
日本型雇用慣行の特徴は終身雇用と年功序列です。しかし、約30年も経済成長が停滞している日本では「一つの会社で定年まで働く」という雇用のあり方は過去のものになりつつあります。企業自体が長期で存続できるか予測できない時代、従業員にも会社に依存せず自分でキャリアを構築できる自律型人材になることが求められています。
2021年施行の改正高年齢者雇用安定法により、企業には65歳までの雇用確保義務と、65~70歳までの就業機会の確保が努力義務として規定されました。
一般に定年が近付いたり役職定年を迎えたりすると業務へのモチベーションが低下する人が多くなるため、就業期間が長期化するとモチベーションの低い人材が社内に増えるリスクがあります。そのためミドルシニア層に対するキャリア自律教育を実施し、モチベーションを維持してもらうことが重要です。
現代は経営環境の変化がめまぐるしく、特にIT技術の進歩は目を見張るものがあります。「AIによって不要になる仕事」というテーマがよくメディアに出るように、どのような領域でも、蓄積してきたキャリアが時代遅れになるリスクがあります。
このため、世代や職種を問わず常に新しいことを学ぶ姿勢、時代にあわせて求められるスキルを身に付ける意識を持つことが必要です。
ミドルシニア世代を自律型人材に育成する施策について解説します。
まず、自社が必要とする人材の要件を定義する必要があります。以下の2点を意識しましょう。
第一に、自社の経営戦略に適合する自律型人材の要件を定義します。経営目標を達成するためには、どのような人材が有益かを検討しましょう。
第二に、すでに社内にいる自律型人材をロールモデルとして設定します。主体的に行動でき、自分の意見を明確に持ち、周囲とも協調しながら成果を上げている人物を選定し、その人材にスポットをあてることが大切です。
社内でロールモデルが活躍する姿や重要視されている姿を見ることで、従業員は仕事への姿勢やキャリアへの考え方を自然に学ぶことができます。
自律型人材を育てるためには、学習機会を増やすことが必要です。特に依存的な企業文化が定着している職場では、マインドセットを変えてもらうべく継続的な研修の実施が必須となるでしょう。eラーニングを導入していつでも学習できる環境を作ることや、越境学習プログラムを導入することも効果的です。
社内に窓口を設置してキャリアカウンセリングを推進すると、従業員が自らのキャリアを考えるきっかけになります。社内カウンセラーでは「将来は起業したい」といった内容を相談しにくいものですが、外部のカウンセラーを活用すれば、従業員も自分の本音を気兼ねなく相談することができます。
アンラーニングとは、過去に学んだ知識を捨てて、新たに学び直すことです。一方、リスキリングは世の中の変化に対応して新たなスキルを習得することです。
昨今は過去に培ったスキルが古くなるスピードが速いため、成功体験を持っているミドルシニア世代ほど、自分のスキルを見直して現在需要の高いスキルを学び直す必要があります。
自律型人材を育成するには時間がかかるため、育成プロセスにおいて評価とフィードバックを繰り返すことが必須です。評価者は、結果ではなく過程に着目し、仮に目標に到達できなかったとしても責めるのではなく、原因を話し合い修正していくことが大切です。
自律型人材は業務に能動的に取り組むため、高いパフォーマンスを発揮します。このような人材が増えると組織全体の生産性向上につながります。従業員も会社主導ではなく、自分のキャリアを意識して主体的に日々の仕事に取り組んでいるとモチベーションが向上するため、企業にとっても従業員にとってもプラスになります。
自律型人材を育成する際のデメリットは、育成に膨大な手間と時間を要する点です。
成長は一人ひとりの資質にも影響されるので個人差が出やすく、なかなか変わることができない人も一定数出てきます。
定期的な研修やカウンセリングの実施も必要なためコストも発生します。このため二の足を踏む企業も少なくありません。
自律型人材は、ヒエラルキーの強い階級型組織にはマッチングしにくい面があります。自律型人材が能力を発揮しやすい組織に「ティール組織」と「ホラクラシー組織」があります。自社がこれら組織の要素を取り込むことができるか、理解することが大切です。
ティール組織の特徴は、従業員全員が業務遂行上の意思決定権を持つことです。個人が意思決定権を行使できるため自律型人材が力を発揮しやすく、企業は新しい事業を生み出していきやすいという長所があります。
パーパスは明確でもビジネスモデルのしばりがない組織ともいえるでしょう。例として、米国アパレルメーカーのパタゴニア社があります。
ホラクラシー組織の特徴は、メンバー間に上下関係がなく全従業員が意思決定権を持つフラットな組織体系を持つことです。例として、米国の靴通販のZappos.com(ザッポス・ドットコム)社が有名です。こちらも能動的に行動できる自律型人材が活躍しやすい組織といえるでしょう。
日本では、これまでキャリア形成は会社主導であることが一般的だったため、自律型人材はどちらかというと元々そのような特性を持つ一部の優秀層に限られていたといえるでしょう。また、自律型人材の育成に取り組んできた企業もそれほど多くなく、社内にノウハウが蓄積されていない企業が大半かもしれません。そこで、活用を検討したいのが外部の教育プログラムです。
パソナでは、従業員の自律的なキャリア形成をサポートすることを目的とする「セーフプレースメント・トータルサービス」を提供しています。キャリアカウンセリングや研修を実施し、一人ひとりの価値観を尊重しながら従業員のキャリア自律を支援するプログラムですので、関心のある担当者の方は、ぜひ下記のリンク先で詳細をご覧ください。
(参考資料:第1 就業状態の動向 1 労働力人口・表1 年齢階級別労働力人口の推移)
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