2021年07月14日 14:16
最近、新聞やニュースでも取り上げられることが多くなり、プライム市場のワードを耳にする機会が増えたのではないでしょうか。
日本取引所グループが公表した資料によると、2022年4月1日に現行の株式市場制度から新市場区分への移行が行われ、それに伴い、企業には様々な対応が求められています。
対応が求められる部分としては大きく「株式の流動性」「コーポレートガバナンスコードの遵守」の2つのポイントがあります。
その中でも、今後の企業の持続的成長・中長期期的な企業価値向上に向け重要な「コーポレートガバナンス・コード」の改訂点、また改訂に伴い企業に求められる対応をみていきましょう。
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<目次>
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2020年3月より現行の株式市場制度の見直しが始まり、2021年4月にはコーポレートガバナンス・コードの改定案が公表されるなど、新市場区分の基準が明確になり、上場企業の方々には市場選択が求められています。
まずは「市場再編成の目的」、最上位市場である「プライム市場」の概要をお伝えします。
市場再編成の目的は、現状の市場区分を明確な基準に基づいて再編成することにより、「上場会社の持続的な成長」「中長期的な企業価値向上」を支え、多様な投資者から高い支持を得られる魅力的な市場の提供をし、豊かな社会の実現に貢献することです。
現状の東証1部の企業数は年々増加し、現在では約2200社にも昇り、世界の市場と比べても最上位市場の社数が多い現状があります。
社数が膨らんだことにより日本の市場価値が相対的に低下しているため、最上位市場の価値を向上を目指し再編成が行われています。
次にプライム市場とは何か、プライム市場へ移行する条件を確認していきたいと思います。
まず、現在は「一部・二部・マザーズ・JASDAQ(スタンダード)・JASDAQ(グロース)」の5つ市場があり、2022年度4月以降は「プライム市場・スタンダード市場・グロース市場」の3つの市場に変更されます。
プライム市場は3つの新市場区分でも、最上位の市場であり、その他市場に比べ高いガバナンス水準が求められます。
プライム市場への上場基準は以下のようになります。
①流動性
<狙い>多様な機関投資家が安心して投資対象とすることできる流動性の基礎を備えた銘柄を選定
<条件>株主数 :800人以上
流通株式数 :20,000単位以上
流通株式時価総額:100億円以上
②ガバナンス
<狙い>上場会社と機関投資家との間の建設的な対話の実効性を担保する基盤のある銘柄を選定
<条件>流通株式比率 :35%以上
③経営成績・財政状態
<狙い>安定的かつ優れた収益基盤・財政状態を有する銘柄を選定
<条件>利益 : 最近2年間の利益合計が25億円以上 or 売上高100億円以上 かつ 時価総額1,000億円以上
財政 : 純資産50億円以上
(参照:日本取引所グループ 新市場区分の概要等について)
新市場への上場基準が明確に示され、高いガバナンス水準が求められる一方で、
2022年4月の一斉移行までに上場維持の基準を満たさない企業に対しては、
「上場維持基準の適合に向けた計画書」を提出・開示することで、経過措置が適用されます。
市場区分の見直しにより、企業には主に「株式の流動性確保」「コーポレートガバナンス・コード」への対応が求められます。
今回は市場区分の見直しだけでなく、今後の経営戦略にも深く関わる「コーポレートガバナンス・コード」の改訂点とそれに伴う企業が行うべき対策をみていきます。
2021年4月に公表されたコーポレートガバナンス・コードの改訂点のポイントは以下の3点が挙げられます。
プライム市場上場会社は、取締役会において独立性を有する社外取締役を少なくとも3分の1以上(条件によっては過半数以上)選任する必要があります。
日本取締役協会の2020年度の調査では、
取締役会における独立社外取締役の比率は以下のようになっています。
日本取締役協会 「上場企業のコーポレート・ガバナンス調査(2020)」
年々、独立社外取締役の比率は高まっているものの、東証1部に上場している42.7%の企業は現状プライム市場への上場要件を満たしていません。
また、今回のコーポレートガバナンス・コードの改訂に伴い、約1000人の独立社外取締役が不足する見通しがあります。選任するにも自社の取り組みを理解し、他社で経営経験がある人などの条件を加えるとより独立社外取締役の数は不足すると考えられます。
▼ 対策
・独立社外取締役の紹介企業との連携
人材不足はすでに顕在化しているため、独立社外取締役を紹介している企業との連携を通して、自社の取り組みを理解し、求めているスキルを持ち合わせた人材獲得に少しでも早く動き出す必要があります。
「持続可能な開発目標」(SDGs)が国連サミットで採択され、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同機関が増加し、また、数年前からESGに取り組む企業に投資資金が集まるなど、世界的にサステナビリティへの注目度が高まり続けています。
実際、今回の市場再編による上場の条件としても「自社のサステナビリティについての基本的な方針を策定し、自社の取り組みを開示」する必要があります。
また、開示の質と量に関してもTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく充実が求められ、今までサステナビリティ課題への取り組みをなかなか推進できていなかった企業にとっては重くのしかかる条件ではないでしょうか。
▼ 対策
・サステナビリティに知見を持った外部連携(企業・個人)
サステナビリティ課題に取り組み、開示する必要があるといえ、「環境問題をはじめ、人権尊重、従業員の健康・労働環境への配慮」など幅広く、どこから着手するべきか分からないという声を多く耳にします。
一度、自社内で協議を行うだけでなく、外部と連携し、多角的な視点からサステナビリティの取り組みを進めることも選択肢の1つです。
経済産業省よりダイバーシティー経営が推進されているように、社会的に人材の多様性が求められています。上場の要件にも「女性・外国人・中途採用者」の管理職登用により中核人材の多様性確保、また自主的かつ測定可能な目標を示し、状況の開示が求められます。
中でも、女性管理職の登用に関しては世界と比較して大きな後れを取っています。
2019年の国際労働機関(ILO)発表によると、世界の管理職に占める女性の割合が平均27.1%であったのに対し、日本では12%にとどまっています。
上記のデータからも中核人材の多様性に関していかに日本が進んでおらず、今後積極的に取り組む必要があるかは一目瞭然ではないでしょうか。
▼ 対策
・多様性の確保に向けた人材育成方針・人事制度の設計
・女性、外国人、中途採用者の窓口を拡大
・管理職登用に向けた研修
中核人材の多様性は企業の持続的な成長を続けるためにも、重要な項目であり、
従業員のエンゲージメントを高めるためにも欠かせない項目です。
現行の人事制度を自社内で見直すだけでなく、中核人材の多様性が進んでいる企業またはノウハウを持った個人と連携をし柔軟に対応することも必要です。
2022年4月からの市場の再編成に伴い、上記に挙げた項目以外にも多くの対応が求められます。
今後企業は世界的な動きである「サステナビリティ」を経営の中心に据え、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に努めていく必要があるのです。
経済の変遷が目まぐるしい今、自社内すべてを完結させることは容易ではないと考えられ、施策を効果的に進めていくためには外部企業・人材との共に歩むことが求められるのではないでしょうか。
・独立社外取締役をご紹介いたします。
https://www.pasonagroup.biz/service/syagaitorisimariyaku
・サステナビリティへの取り組みをご支援いたします。
https://www.pasona-komon.co.jp/
・女性の管理職比率向上をご支援いたします。
https://www.caplan.jp/kyouiku/houjin/woman_leader/index.html