2023年06月20日 08:30 #女性活躍推進
仕事で業績を残しながらも自分に自信が持てず、自己肯定感が低く、ネガティブな思考に陥ってしまう……このような心理傾向は「インポスター症候群」と呼ばれます。相対的に女性に多くみられ、女性活躍を阻害する要因になっています。
この記事では、インポスター症候群の特徴と、なぜインポスター症候群が女性活躍を阻むのか、企業はどのような対策をとるべきかを紹介します。
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■女性活躍を促進するために企業がとるべきインポスター症候群対策
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インポスター症候群とは、一定の実績を残して周りから評価されても「運がよかっただけで自分の実力ではない」「評価に値しない」と思い込む心理状態を指します。
「インポスター」とは英語の「impostor(詐欺師)」からきており、インポスター症候群の傾向が強い人は、高く評価されてもその評価は実は正当なものではなく「他の人を騙していることになるのではないか」と思い悩みます。
問題点としては自分の能力や実績を正当に評価できないため、キャリア上の成功や成長のチャンスを逃してしまうという点です。場合によっては精神疾患の要因にすらなるといわれています。
インポスター症候群の特徴を紹介します。
どれだけ成果をあげても、それは自分の実力以外の要因によるものだと考えます。成功を偶然と見なすため、自己評価・自己肯定感が高まらず低いままであり、常に自分に自信を持てず、他人と比べて自分は劣っていると考えがちです。
仕事で実績を残しても、実力ではなく周囲を騙したような結果と考えてしまうだけでなく、失敗することを極端に嫌うので新しいことへの挑戦を躊躇する傾向もあります。
また、自分の評価が大きく変わるような成功への不安も持っています。
インポスター症候群は自己肯定感と深い関わりがありますが、自己肯定感も男性より女性が低い傾向にあります。
例えば、福井県鯖江市が2021年に行った『自己肯定感に関する調査』を見ると、20~50代にかけてすべての年代で女性の自己肯定感が男性より低位になっています。このような自己肯定感の低さゆえに、女性は相対的にインポスター症候群に陥りがちです。
理由として、男性が主導的な役割を担っており、活躍する女性が少数であることなどの社会的要因の影響、性差による認知の違いなどがあげられています。
インポスター症候群が生じる原因には、個人の資質や成育環境、周囲の環境など複数の事象が影響しています。
まず、本人の特性があります。成育環境によって、自分に対する周囲からの評価に敏感に育った人は、職場の上司や同僚からの褒め言葉や期待の言葉に対し、その裏側を意識します。
期待されていると必要以上に感じることで、業務を完璧にこなさなければならないというプレッシャーが強まり、その過度なプレッシャーから失敗を恐れる気持ちが生まれます。
また、失敗を恐れる心理から、たとえ成功した場合でも「成功要因の中で自分以外にあるもの」をクローズアップしがちです。
ジェンダーステレオタイプとは、性別に対する固定的な思い込みやイメージのことです。
このステレオタイプが、インポスター症候群が生じる社会的背景にもなっています。
男性ばかりが企業の中核を占める職場では女性はロールモデルを見つけにくく、自分の能力や組織への貢献、リーダーシップスタイルについて違和感を持ちやすいため、インポスター症候群を引き起こす可能性が高くなります。
関連記事:ロールモデルの意味とは?働く女性の例や見つけ方を紹介
世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数2022 」において、146か国中116位(前回は156か国中120位)と順位の低い日本では、このような組織がまだ多い可能性があるため注意が必要です。
参照:ジェンダー・ギャップ指数(GGI)2022年 | 内閣府男女共同参画局
過度な責任感もインポスター症候群につながります。与えられたミッションを必ず成功させなければならないと思い込み、必要以上のプレッシャーを受けてしまうからです。
さらに、強い責任感ゆえに他人に助けを求められず一人でこなそうとするため、これらが重なりインポスター症候群に陥りやすいのです。
インポスター症候群は、以下の理由から女性活躍の障害となります。
インポスター症候群による自己評価の低さが行動を抑制し、自らチャンスを逃してしまうことがあります。昇進の打診を受けても自分にはその能力がないと判断し、自分から辞退してしまうこともあります。これでは昇進の機会を逃すだけでなく、業務への意欲自体を疑われることになりかねません。
性別を問わず有能な人に相応のポジションで能力を発揮してもらってこそ企業は成長します。インポスター症候群によって女性が成長の機会から逃避してしまうことは、本人はもちろん企業にとってもマイナスです。
女性が自分の能力や成功に疑問を抱き、男性よりも自己評価が相対的に低くなると、それが組織内のジェンダーステレオタイプを増幅させてしまいます。周囲の男性社員はもちろん、後輩の女性社員の心理にも悪影響を及ぼすのです。このため、男女間の不平等な状況が持続してしまい、女性活躍を阻害するおそれがあります。
仕事の成果に対する捉え方や価値観を見直して、ジェンダーステレオタイプを克服してもらう必要があるでしょう。
関連記事:女性活躍推進で企業や社員はどう変わるのか?成功例と具体的な課題解決方法について解説
インポスター症候群について、企業がとれる対策を紹介します。
カウンセリングや1on1ミーティングなどを実施してメンタルサポート体制を整備することが必要です。カウンセリングやミーティングの際は本人の様子を見ながら慎重に判断し、インポスター症候群の可能性がある場合は、メンタルサポートを通じて自己肯定感の向上を目指します。
サポート体制を確立した上で能力相応のポジションを任せ、実際に実績を残すことで自己肯定感のさらなる向上を図ります。
インポスター症候群についての理解を深めるための社員研修を実施します。
女性社員を対象にした研修ではインポスター症候群についての理解促進、自己肯定感を高めるためのワークショップ、女性の成功事例の共有などをおこないます。インポスター症候群の傾向に気づいてもらった上で、社内外の女性成功事例を共有し「自分でもできそう」と思ってもらうことがポイントです。
また、企業が性別や自信の有無に関係なく、新しいポジションや仕事に積極的にチャレンジする社員を求めていることを伝えましょう。
管理職研修でインポスター症候群についての知識を共有することも重要です。評価する側の意識が変わることで社内に浸透しているジェンダーステレオタイプが解消されれば、多くの女性が能力を発揮することに躊躇しなくなるでしょう。
インポスター症候群を抱える人の中には、ワークライフバランスの問題を抱えるケースが多く見られます。自信がないという理由には、能力的な問題だけでなく育児や介護などの負担によって難しいという場合もあります。
今や共働き率が7割近くになっている状況であり、多少なりともインポスター症候群の傾向のある人が自信を持ちづらい環境になっています。
このため、多様な働き方の導入や福利厚生制度の充実、育児支援策の提供はインポスター症候群の改善と女性のキャリア形成にプラスに働くでしょう。
関連記事:多様な働き方とは?実践企業の取り組み例とメリットを解説
インポスター症候群は誰しもが陥るリスクを持っていますが、女性は控え目であることが好感をもって受けとめられる文化的背景[4] もあり、よりインポスター症候群に陥りやすい傾向があるでしょう。
まずは、インポスター症候群について理解を広める研修をおこない、女性自身にインポスター症候群の傾向があると気づいてもらうことが大切です。自信を持てるまでにはある程度時間も必要なので、継続的なカウンセリングや1on1ミーティングなどを通じて自己肯定感を高めていく継続的なサポートもしていきましょう。
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パソナでは女性活躍を支援する取り組みを長年おこなってきました。女性活躍に関わる課題は会社ごとに千差万別です。他にも女性活躍のための施策はありますので「女性活躍推進に関する実態調査」を、自社で施策を実行する際の参考にしていただければと思います。
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2023年12月19日 08:30
近年「ガラスの天井」というワードを耳にすることが増えました。米国で生まれた女性活躍を阻む目に見えない障害を意味する言葉なのですが、昨今は日本でも女性の管理職への昇進や役職への登用シーンで用いられることが多くなっています。 ガラスの天井は、女
2023年08月15日 08:30
近年、女性の社会進出が加速しています。共働き世帯と専業主婦世帯の数は1990年代に逆転し、2000年代以降は両者の差が拡大する一方です。さらに2016年には女性活躍推進法が施行され、女性の活躍に対する社会的な後押しも強い状況にあります。 し