2024年02月13日 08:30 #人材育成・強化
一般に、管理職研修は現場からあまり評判がよくありません。形式的で、どちらかというと机上のマネジメント理論を学ぶ場という印象を持たれがちです。
しかし、管理職研修は、昇格した人材が新たな役職にふさわしいマインドやスキルを身に着けて活躍するためにとても重要です。本記事では、管理職研修の重要性や管理職に求められる役割・マインド・スキル、そして女性管理職を育成するための施策も紹介します。
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■女性が「管理職になりたい」と思えるロールモデルを作るために
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管理職研修の目的は、大きく以下の2点です。
・管理職に求められる「役割」「マインド」「スキル」の理解
・必要な「マインド」と「スキル」の獲得
例えば、プレイヤーから初級管理職になるとき、初級管理職から中級管理職になるとき、さらに上級管理職になるとき、求められる役割・マインド・スキルは大きく変わります。
管理職研修を実施することで、人材に新しいポジションでの役割と責任や身に着けていくべきスキルを自覚してもらうことができます。本人の成長につながり、その結果組織運営もスムーズになります。
仮に管理職研修をおこなわないと、前ポジションの意識のまま業務をおこなってしまい成果を出せない管理職が増えるリスクがあります。管理職の能力に格差が出すぎないためにも、研修は必須でしょう。
管理職は、部下の仕事への意欲・成果・チームワーク・企業カルチャーに大きな影響を与えます。これは、管理職が経営層と現場の間に位置し、双方と直接コミュニケーションをとるポジションだからです。
また、管理職の能力は業績を左右します。プレイヤーはどんなに優秀であっても一人分の業績しか上げられませんが、管理職は5人、10人、100人と多数の人材の力を引き出せるポジションにいます。
だからこそ、管理職には定期的に研修をおこない、役割を認識して視座を高く持ち続けてもらう必要があります。最新のマネジメント手法や業界トレンドなどを学んでもらうことも重要でしょう。
管理職の育成は本人だけでなく、組織全体の成長につながります。
ここでは、管理職に求められる役割・マインド・スキルについて、それぞれ具体的な事例を紹介します。
管理職は経営の一端を担うため、部署における経営の3資源「ヒト」「モノ」「カネ」を有効に使う役割があります。
1業務/予算管理
部署の業務や予算を管理します。具体的には、会社の方向性に沿った一年の部署の目標と戦略を立てて、業務内容に応じて適切な人材配置をおこない、予算を配分します。また目標達成に向けて進捗管理をおこないます。
2部下の管理/育成/評価
人材育成・評価・管理も主要業務です。チームにはさまざまな個性やスキルを持つメンバーが存在します。一人ひとりの適性やポテンシャル、意欲に応じた指導やアドバイスをおこない育成します。また、本人の業績や努力を評価する役割があります。
3経営方針の浸透
日々の業務やミーティングを通じて経営方針を現場に浸透させます。従業員は、組織の大きなミッションを理解すると仕事の意義をより感じるようになります。目標のために他メンバーや他部署の人材と協力しようという意識も強くなるでしょう。
4影響力の発揮
管理職は、存在そのものが従業員に大きな影響を与えます。部下は上司に似る傾向があるため、常に「部下のお手本」であるという自覚が必要です。ここぞというときは、管理職としての権限や影響力を発揮し、仕事を円滑に回す役割を持ちます。
管理職としてのマインドを持つことは基本であり重要なことです。管理職のマインドで特に重要なのは、以下の3点です。
1個人ではなくチームとして成果を出す
管理職はプレイヤーではなくそのチームの責任者です。特に初級管理職になるときには、自分の成果を上げるという意識から、チームで成果を上げる・部下を育成する・部下の業績を向上させるというマインドにアップデートする必要があります。
2視座を高くする
視座を高くするとは、これまでより上の立場のポジションの目線で考えることです。課長なら、部長や経営者の立場になってビジネスを捉えます。職位が高くなるほど、業界内の変化など外部環境を踏まえ、組織がどう動くべきかという多角的な視点が求められます。
3部下との適切な関係性を保つ
管理職になったら、部下すべてに対して公平な態度をとることが基本です。一人ひとりの部下の意見を聞き、相性にかかわらず、ほめるべきときはほめ、注意すべきときには注意します。コミュニケーション上の明確な指針をもつことで部下からの信頼を得ることができます。
管理職にも、管理職ならではの業務スキルが必要です。中でももっとも重要なスキルは以下の3点です。
1意思決定
部下は、上司に業務上の指示や判断をしばしば求めます。また、現場からさまざまなよい提案をしてくれます。権限内であれば迅速に最適な意思決定をし、権限外であれば速やかに上長の判断を仰ぎます。そうすることで部下からも信頼されます。
2マネジメントスキル
マネジメントスキルとは、業務の計画を立て、適切な人材をアサインし、進捗管理をおこなうことです。メンバーのスキル・個性・仕事量を把握し、彼らの成長につながるタスクを割り振り、サポートしながら業務を進めます。
3コミュニケーション能力
管理職になるとさまざまな関係者と折衝する機会が増えます。部下とのコミュニケーションでは聞く力を中心としたコーチングスキルが必要となります。他部署や経営層とは、話し合って落としどころを合意していくコミュニケーション能力が必要です。
近年は、管理職を志向しない人が男女問わず増えています。これは企業組織にとって重要な課題となっています。今後は、管理職の仕事に魅力を感じてもらう取り組みや管理職を育成する取り組みが求められていくでしょう。
2023年1月、株式会社識学が国内の従業員数10人以上の企業の20~59歳の会社員に実施した「管理職に関する調査」では、非管理職150人のうち「管理職になりたいと思う」とする人の割合は、わずか8%でした。
「条件によってはなりたいと思う」割合は20%。72%が管理職には「なりたいとは思わない」と回答しています。
さらに、女性は4%しか管理職になりたいと回答していません。「出世欲がないから」が50.9%「責任が伴うから」が50%「仕事量が増えるから」が42.6%となっています。そもそも、管理職の仕事に関心がない印象すら受ける回答です。
4位に「管理職に向いていないと思うから」が38%を占めていることも見逃せません。
また、2023年6月に公表された世界経済フォーラム(WEF)の「ジェンダーギャップ指数2023年」では、日本の総合スコアは146カ国中125位です。前年の116位からさらに下がっています。
大きな要因は政治分野のスコアが低いことですが、経済分野も123位と低いことはたしかです。特に女性管理職比率の低さが133位と低い状況となっています。同一労働における男女賃金格差も75位と、決して上位ではありません。
※関連記事:ジェンダーギャップ指数とは?日本の現状と改善にむけた取り組みをご紹介
日本の場合、男女雇用機会均等法が施行されたとはいえ、当初は女性の採用数が男性より少なく、社内の管理職候補の女性が少ないことや、昇格する年齢が海外よりかなり高いことも影響しているでしょう。単純比較はできませんが、それでも日本の企業社会で女性が不利になりがちであることはうかがえます。
・2030年までに女性役員比率30%目標
2023年6月に、政府は東京証券取引所の「プライム市場」に上場する企業に対し、2030年までに女性の役員比率を30%以上にする方針を打ち出しました。国として企業に多様な価値観や考え方を受け入れて成長することを奨励しています。あくまで努力義務ですが、今後、女性役員登用の動きが大手企業に広まっていくでしょう。
企業が、女性管理職を増やすことの壁の一つがロールモデルの少なさです。対策としては、管理職候補人材の女性を対象としたロールモデル育成のための研修や環境整備があります。人材がいない場合は、ロールモデルとなる人材を外部から採用する選択肢もあるでしょう。
具体的な施策例を紹介します。
※関連記事:女性管理職の比率は?増やすための施策・育成方法を紹介
識学の同調査では、女性管理職を増やすために必要なトップ3の回答は「子育てや介護などの両立支援」が54.7%「女性が不利にならない人事評価の手法」が50%「育休や在宅勤務などの社内制度を設ける」が43.3%です。
フレックスタイム制や短時間労働制、リモートワークなど子育てや介護との両立支援となる体制、性別にとらわれない評価制度などが必要なことがわかります。また、女性の絶対数が少ないという回答もあるため、中長期的な視点で女性の採用数を増やすことも検討しましょう。
管理職候補人材の女性に、リーダーシップ・マネジメント・コーチングなど管理職登用を見据えた研修プログラムを早期から実施することが有効です。
女性は自分に対する評価が厳しく、自分の成果を低く見積ってチャンスを失う傾向があるので「インポスター症候群」について周知を進めるセミナーを実施してもよいでしょう。さまざまな研修によって知見を身に着け、自分の管理職適性を客観的に判断できるようになれば、女性社員の自信につながります。
※関連記事:インポスター症候群とは?特徴や女性活躍を阻む理由を紹介
企業にとって管理職研修は、従業員の能力アップだけでなく、組織として成長するために必須の取り組みです。近年は管理職になりたくない人が増えており、特に女性にその傾向があります。
しかし、管理職の適性であるマネジメント力やコミュニケーション能力は、多くの女性が持っている資質でもあります。社内にいる、地道にスキルや能力を高めてきた女性社員のポテンシャルにもう一度目を向けて教育に投資することをおすすめします。また、女性の数があまりに少ない場合は、特定の部署や新プロジェクトの責任者などを中途採用する選択肢もあります。少人数からでも社内でマネジメントを担う女性が出てくると、組織のカルチャーに自然な変化が起きてきます。
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