2022年04月12日 08:30 #セカンドキャリア支援 #人事トレンド
2021年4月1日に施行された「改正高年齢者雇用安定法」により、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となりました。
背景には、急速な少子高齢化で労働人口が減少するなか、国の経済活動を維持していくために、高年齢者の労働力を確保し、そのスキルや能力を存分に発揮してもらうための環境整備が必要になったことがあるでしょう。
さまざまな企業が対策を講じるなか、ミドル・シニア世代の総合的かつ継続的なキャリア開発が、社会全体の課題となっています。
本記事では、高年齢者の就業機会確保に伴うキャリア形成の必要性や支援のポイントについて、詳しく解説します。
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■キャリア形成・自律を応援するキャリアオーナーシップ・プログラムの活用策
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少子高齢化による人口減少社会を迎えた現在の日本において、労働力の維持・確保は早急に対策が必要な重要課題です。
平均寿命の伸長に伴って年金支給年齢が段階的に引き上げられていることもあり、働く意欲がある高年齢者の活躍の場を広げ、収入維持とともに労働力人口の維持・確保を図る目的で施行されたのが、高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)の改正です。
2006年施行の改正では、65歳までの継続雇用が義務化、2013年施行の改正では希望者全員の65歳までの雇用確保が義務化されました。
そして、2021年4月1日施行の改正法では、70歳までの就業機会の確保が事業主の努力義務となったことがポイントです。70歳までの定年引上げ、定年制の廃止、70歳までの継続雇用制度導入など、5つの措置のいずれかを講ずることが奨励されています。
この法改正により、労働意欲のある高年齢層が働き続けられる「生涯現役社会」の構築がさらに進むことが期待できます。
いずれにせよ、企業は法律に基づき、個々の高年齢社員の就労に関する希望を聴取し尊重する必要があります。
今後はそれぞれのケースに応じた研修、教育、訓練などを実施・強化しつつ、ミドル・シニア世代のキャリア形成を支援することがますます重要になります。
出典:厚生労働省 高年齢者雇用安定法 改正の概要
2030年には日本の人口の1/3が高年齢者になると予測されています。社会の活力を維持するためだけでなく、企業は自社の人材戦略の面からも、今後増加するミドル・シニア世代に、自社の戦力として力を発揮してもらうための取り組みが必要になります。
関連記事:2030年問題とは?労働力不足が招く企業の問題と人材活用の重要性
ミドル・シニア世代の知見やスキルの活用や、モチベーションを保ちながら働き続けてもらうことは、企業活動において重要な課題になりつつあります。
まず、ミドル・シニア世代の意識改革が急務です。なぜなら、現在の特にシニア世代が社会に出たころは、60代で会社を定年退職して仕事の第一線から離れるサラリーマン像が「普通」とされていました。今より金利も高く、ある程度の貯蓄や退職金があれば余裕をもって生活できる時代でもありました。一度入社したら長期間雇用する企業が多かったため、キャリア形成について真剣に考える必要性があまりなかった世代とも言えるでしょう。
しかし、近年は予測困難な時代です。どのような業界の企業であっても数年先ですら安定していると言い切れません。ミドル・シニア世代に限らず終身雇用を維持するのは難しくなっています。さらに、老後に2000万円必要になると言われるように、現役を引退したあとの自助努力がより求められるようになりつつあります。
ミドル・シニア世代には日本社会の変化を理解してもらい、これまでのような「会社依存型」の働き方から、
いつでもどこでも働ける「自律型」へ意識を転換し、自分らしいキャリアを長期的に設計する力を持つ必要性・重要性を認識してもらうことが大切です。
ミドル・シニア世代が、今後も安心感と納得感を持って仕事に取り組むためには、自身の強みを含めた生涯取り組みたい仕事、キャリアの軸を見極めていく必要があり、企業がその支援をおこなうことが重要です。
企業側にとって、定年延長は「安定した労働力を確保できる」というメリットがある一方で「組織全体の若返りが図れない」「人件費が増加する」「新しいアイデアやイノベーションが生まれにくい」といったデメリットが存在します。
企業がデメリットを乗り越え、戦略的に労働力を活用するためには、ミドル・シニア世代の自律的・主体的なキャリア形成を支援する取り組みが必要です。
人員の再構成や配置の適正化など、高齢化時代に向けた具体的な人事制度の構築・見直しも急がれます。以下の人事課題への対応が必要になっていくでしょう。
・定年延長
法制化までの人事制度の見直し
・人員構成の適正化
バブル期入社の社員が50代になり、リーマンショック以降の採用を抑えたため人員構成上ミドル・シニア世代の割合が増加
・高齢化時代に向けた人事処遇制度
職能格制度を基本とした人事制度による役職不足、労務費高騰。また登用、活躍の機会喪失により若手社員の離職率増加
・モチベーションの低下
企業の変化や技術革新に対応できない社員に対する動機付けや、スキルや経験を活かせる配置が難しく、本人だけでなく組織の士気・活気も低下
・社員のキャリア自律
多くの社員がキャリアに対して受動的で「定年・再雇用」が前提。定年延長に向けキャリア自律の文化・風土の醸成、施策・制度の充実が必要
・同一労働同一賃金の対応
再雇用者の処遇が見直されることで、労務費と再雇用率が増加。再雇用前までの処遇設計と合わせた見直しが必要
モチベーションが低下しがちなミドル・シニア世代のキャリア形成支援のポイントは、前述のように日本の環境変化を理解してもらうことです。そして、個々の多様な価値観を理解し、その能力やスキルを継続的に開発する支援をしていくことです。
単純に、定年延長となったことで高年齢者を再雇用、または採用することだけに集中すると「活躍する機会のないミドル・シニア世代」が増えることになります。「ミドル・シニア世代が働きやすい環境づくり」には「活躍できる場をつくる」ことも含まれます。
DX化など技術革新に対応できるようなキャリア自律、数年後の市場価値を踏まえたキャリア設計、IT教育を全員に実施するなどミドル・シニア世代のエンプロイアビリティを高めることが重要だと言えるでしょう。
ミドル・シニア世代では、個々のスキル・能力、仕事に対する価値観、さらには資産の状況もかなり多様化します。支援するにあたっては、一人ひとりの多様な価値観に寄り添い課題に向き合う、個別相談型アプローチが適しているでしょう。
集合型研修や人事制度構築などの「点」の支援のみならず、社員の多様な価値観を十分理解し、スキル・能力を継続的に開発できる「面」の支援までおこなうことがポイントです。
それには、キャリア支援に課題を抱える企業とミドル・シニア世代の社員、双方をトータルで支援できる外部の専門サービスプログラムの導入・活用などが有用です。
人事担当者向けプログラムから、ミドル・シニア社員の個別キャリアカウンセリングまである充実したサービスで、社員と組織を活性化できれば、企業風土・文化の醸成にもつながることが期待できます。
2021年4月1日に施行された「改正高年齢者雇用安定法」により、現状では強制力を持たないものの70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となりました。
もっとも少子高齢化のスピードを踏まえれば、今後ミドル・シニア世代の知見やスキルをいかに活用していくかは、企業活動を活発にするための重要な課題です。
ミドル・シニア世代の多様な価値観を理解し、その能力やスキルを継続的に開発していくための支援をおこなうことは、加速する少子高齢化社会に適した人材戦略へのシフトだと言えるでしょう。
企業側にミドル・シニア世代の意識改革と、キャリア形成支援についての経験値が浅い場合は、キャリア形成・自律を応援するプラットフォームを活用する方法もあります。社員一人ひとりの能力、スキル、職業生活設計の再構築や組織の活性化につながる、キャリアオーナーシップ・プログラムを導入してはいかがでしょうか
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