2022年07月26日 08:00 #女性活躍推進 #エンゲージメント向上 #働き方改革
2021年6月に改正し、2022年4月1日から3段階で施行される「育児・介護休業法」。今回は男性の育児参加のより一層の促進が一つの大きな軸となっており、性別を問わずに仕事と育児を両立できるようにするための制度が盛り込まれています。
男女がともに仕事と育児を両立し、誰もが活躍できる社会をつくるためには、どのような取り組みを推し進めるべきなのでしょうか。
この記事では、男性育休取得を推進する改正育児・介護休業法のポイントや、企業ができるサポート・両立支援について解説します。
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2022年4月1日、2022年10月1日、2023年4月1日と段階的に施行される今回の育児・介護休業法には、男性の育児参加を後押しし、育児休業の取得推進を目的とした制度が盛り込まれています。性別を問わず、希望に応じて仕事と育児を両立できる社会を実現するための制度となっていることがポイントです。
育児・介護休業法改正の背景には、女性と比べ男性の育児休業取得率が低水準となっていること、女性の社会進出が一般的となった現在でも出産・育児を機に仕事を続けることができずに退職する女性がいることが挙げられます。
厚生労働省の調査資料『育児・介護休業法の改正について』によると、2020年度の男性の育児休業取得率は12.65%。年々上昇しているものの、女性の取得率81.6%と比較すると依然として低い水準であることがわかります。
出典:厚生労働省『育児・介護休業法の改正について』p.5
同調査によると、第1子出産前後の約50%の女性が出産・育児により退職しています。さらに、妊娠・出産を機に退職した理由のトップは「仕事と育児の両立の難しさ」で41.5%、続けて「育児・家事により時間を割くため」が29.2%となっています。
出典:厚生労働省『育児・介護休業法の改正について』p.3
また、民間の調査によると、2017年に出産で退職した女性は推定20万人。出産退職による経済全体の付加価値損失は1兆1,741億円と見込まれています(内閣府男女共同参画局『「第1子出産前後の女性の継続就業率」及び出産・育児と女性の就業状況について』より)。出産を機に女性が職場を離れると、本人の所得が減るだけではなく、働いていた企業にも経済的損失が生じることになるのです。
育児のスタートとなる出生直後の育児休業を制度としてより柔軟に拡充し、積極的な取得を促進することは、男性の育児参加への第一歩となります。男女がともに仕事と育児を両立できる社会は、女性の離職防止や少子化対策にもつながり、さらには企業や経済全体にとってもメリットが大きいといえます。
今回の改正育児・介護休業法では、現行制度の「パパ休暇」は廃止され、2022年10月より「産後パパ育休制度」が新たに施行されます。
参考:厚生労働省『育児・介護休業法 改正ポイントのご案内』
なかでも「休業中の就業」を可能にする措置は注目したいポイントです(現行制度では原則就労不可)。就業日数や時間には上限(※1)があり、育児休業給付支給や社会保険料免除の要件に留意する必要性は生じるものの、産後パパ育休制度は通常の育児休業とあわせて取得でき、育児休業給付の対象となります(※2)。
つまり、一部就業しても育児休業扱いのため、就業日数・時間によっては給付金や保険料控除のメリットが受けられます。変化の激しい社会情勢の中で、休業後にスムーズな職場復帰を目指すという意味では、休業中の一部就業も視野に入れてよいでしょう。
一方で、企業としては実務的にますます複雑となった新制度への対応を急がなければなりません。従業員をどう支援するか検討するとともに、人事が育児休業の期日や回数を管理できるように準備しておくこと、また個別でいつでも相談できるような対応窓口を早急に設けることが重要です。
(※1)就業可能日の上限
•休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分
•休業開始・終了予定日を就業日とする場合は、当該日の所定労働時間数未満
(※2)休業中に就業日がある場合
就業日数が最大10日(10日を超える場合は就業している時間数が80時間)以下である場合に、給付の対象となる
(厚生労働省『育児・介護休業法 改正ポイントのご案内』より)
現行の制度では個別周知が努力義務だったことから、育児休業の取得に際しては男性の60%以上が「企業からの働きかけがなかった」と回答していました(厚生労働省『男性の育児休業取得促進 研修資料』より)。しかし、新制度では「妊娠・出産を申し出た労働者に対する育児休業制度等の周知・意向確認」が義務付けられたため、企業としては職場環境の整備を進めることが急務となります。
まずは新制度が効果的に利用されるよう、従業員が休みを取得しやすい風土を醸成する必要があります。企業理念に「ワーク・ライフ・バランスの実現」を組み入れるなど、組織の意識改革をトップダウンでおこない、社内に浸透させることが大切です。
仕事と育児の両立を希望する従業員への具体的な両立支援としては、職場復帰後の処遇の明確化や残業の廃止、テレワークや変形労働時間制度の導入が挙げられます。また「育児休業がキャリアに影響を及ぼすのではないか」という従業員の不安を払拭し、キャリア形成ができるようにサポートするのも有効な支援策となるでしょう。
今回の改正育児・介護休業法では、企業に「研修の実施」「相談窓口の設置」「取得事例の提供」「制度と取得促進に関する方針の周知」のいずれかを実施することが義務付けられました。従業員からの育児休業に関する申し出が円滑におこなわれるようにするには、企業として育児休業を取得しやすい環境を整える必要があるからです。
実際に、男性の育児へのコミットを上げ組織に浸透させるためには、企業や人事・労務担当者が制度内容を正確に理解し、自社の現場に落とし込むことが大切です。男性の育児参加を促すプログラムや関連する女性活躍推進のための研修は、働き方改革やワーク・ライフ・バランスの取り組みを前進させ、企業価値の向上にもつながっていくでしょう。
今回の改正育児・介護休業法は、男性の育児参加を軸として、夫婦で育児や家事をおこなうことで、負担が偏りがちな女性が継続して働き続けられる社会をつくるための制度が盛り込まれています。働き方が一律ではなくなってきている今、仕事と育児の両立支援を強化し誰もが活躍できる社会をつくることは、企業価値の向上にも大きく寄与するでしょう。
そのためには、女性に向けた制度を整えるとともに、男性向けの制度を充実させる必要があります。男性の育休取得は育児参加のきっかけであり、この制度にとどまらず男性が育児に積極的に関われるように会社として取り組みをおこなうことが大切です。まずは男性の主体的な育児参加を組織全体に浸透させるために、男性の育休取得や女性活躍推進に関連する外部の研修プログラムを取り入れることをおすすめします。
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