人事部の皆さま、デジタルトランスフォーメーション(DX)は進んでいますでしょうか。人事部でもDXが求められるようになり、人事管理システムや人材管理ツールを導入する動きは増えてきているかと思います。
人事領域のDX化は「HRDX」と呼ばれ、具体的なテクノロジーは「HRテック」と呼びますが、このHRテックに関して「人事管理システムや人材管理ツールを導入しても何も変わっていない」というお悩みをよく耳にするようになりました。
そこで今回は、HRテック支援のプロであるキャプラン(パソナグループ)の礒さんに、社内でHRテックが進まない原因とその対策についてお話を伺ってみました。
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キャプラン株式会社 タレントマネジメント事業部
HRコンサルティンググループ グループ長
礒 一貴
SIerでプログラマーとしてキャリアをスタートし、2010年からは人事系のフロントシステムの開発プロジェクトに数多く携わる。2014年よりキャプランで「サクセスファクターズ」の導入コンサルティング業務を担当。長きにわたり人事システムに携わっており、得意領域としている。開発の経験と業務運用の経験というクロススキルを有するため、システムにはシステム屋としての目で見て、業務には業務経験からの目で見ることができる。
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様々なことがボトルネックになっていて、それによって「ツールを導入しても変わらないよね」という空気になっています。その結果、「HRテックなんてダメだ」とか「ツールなんて、うちの会社には合わないんだよ」と烙印を押されてしまっているような印象です。
そうですね。もともと日本ではデジタルアレルギーの人が多いと思いますが、さらに増長してしまって、なかなかデジタルの恩恵にあずかれない感じです。
ええ、では5つほどご紹介させていただきますね。
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<目次>
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まず1つ目は「ITリテラシー」の問題ですね。日本では人事部の人でも一般社員でもITリテラシーが高くないのではないかと思っています。
HRテックが進んでいる欧米は、子供の頃からデジタルに触れている人が多くてリテラシーも高いです。なので、新しいツールにはすぐに飛びついて触りながら学び、使えるかどうかを判断しています。
日本人は真面目なので、触ったとしてもそのツールの領域から外に出ないんですね。勤怠システムだったら勤怠を入力することしかしない。ちゃんと入力することすらされないこともありますよね。
『現場のリテラシー』がキーワードかな、と思います。現場からはよく「入力するのが面倒くさい」というセリフが聞こえてきます。新しいものには触りたくない、上から言われたから仕方なくやっている、という感じなんですよね。これではなかなかテクノロジー化は進んでいきません。
これはもうマインドの問題ですね。新しいものを目にした時に、脊髄反射のように拒否反応を示していては、なかなか前に進みません。何ごとも好奇心を持って取り組むようにすべきですし、そういったマインドになるような場を設けないとダメだと思います。
ええ。言い方は悪いですが、まるで江戸時代の鎖国のようにも見えます。「デジタル鎖国」とでも言いましょうか。
そうです。それが2つ目の原因に関係してきますね。
2つ目はまさに目的を意識していない点です。「ツールを導入すること」が目的になってしまっている企業さんが多いんですよね。
目的を意識していない理由は2つあって、1つは導入する担当者が途中で「目的を見失ってしまった」ために、導入することが目的になってしまったというケースです。
ええ、もう1つは「そもそも目的を設定していない」というケースです。目的がなくて最初からツールを導入することがゴールになっていたら、それは運用も上手くいくはずがありません。
はい。まずは運用設計の中で目的をしっかりと作りこむべきです。そして、その目的を伝え続けていかないといけない。
トレーニングが効果的ですね。たとえば、ワークマネジメントツールの1つに『Asana』がありますが、これを使いこなすには、そもそも自分で業務をマネジメントできてタスク管理ができていないとダメなんです。だからまずはトレーニングの場で自分自身のタスク管理の方法について学ぶわけです。
そうです。自分で業務をどうマネジメントするかを学んだうえで、「Asanaを使うことでもっと便利になる」というステップを踏んでいき、定期的に振り返りの機会をつくる。そうすることで定着化していくわけです。
3つ目は、「どんなツールを導入すべきなのかよく分からず、外部企業から言われるままに導入している」ということです。この図表はHR Techナビと株式会社ウィルグループの共同企画で作成されている『HR Tech業界カオスマップ』で、 HRテックの業界が網羅的にマッピングされているものです。
(引用元:9カテゴリー449サービス掲載!HR Tech業界カオスマップ より)
HRテックの本場である米国ではもっと多いんですけども、これだけあると「うちの会社にはどれがいいのか分からない!」という悩みが発生するわけです。
そして、大きなSIerさんやコンサルティングファームさんに言われるままにツールを導入したものの、コストばかり高くてまったく成果につながらなかったという例が出てきてしまうのです。
多くの場合は有期契約ですから、導入の期限が迫ってきたところで「あれをやってなかった!」などとバタバタしながら急ピッチで導入を進めてしまうんです。
もう1つ生々しいことを言うと、大きなSIerさんになると大きなお金が動かないと利益が出せないため、高額なツールを推奨せざるをえなかったりします。
残念ながらそうなります。ますます中小企業のデジタル化が進まなくなってしまいますよね。これでは、日本のHRテックも進んでいかないわけです。
やはり、「人事の皆さんの負担をどう減らせるか」とか「社員の皆さんにとって意味があるものになるか」という視点で一緒に考えてくれて、かつ中立の判断軸を持ってツールを選定してくれる会社に相談したほうがいいと思います。
ええ。導入時に「その部分は、お客様が考えてください」と突き放すコンサルタントも多いようですが、一緒に考えていかないと上手くいきません。それに、クラウドツールは入れっぱなしではなくて、企業規模が大きくなったり事業状況が変わったりしたらツールも変えていくべきものなんです。その辺りも一緒に考えてくれる会社を選んでほしいものですね。
4つ目は、ツールで使うデータが古いままで、ツールとして使い物にならないというケースです。
そうです。人事管理システムや人材管理ツールで使われるのは人事情報ですから、常に新鮮なデータでないとダメなんです。でも、人が異動してもデータは古いまま、みたいなことがよくあるんですよね。
その通りです。そうして「これって使えないよね」という感じで、システムが使われなくなってしまうんです。
運用をしっかりするのも大事なんですが、それ以前の『設計』をしっかりとやっておくことが重要になります。
そうです。そうしてフレッシュなデータでご利用いただくことがポイントですね。
5つ目は、システムの不具合などに人事の皆さんが対応して疲弊してしまうことです。ツールを導入する前に人事の方とお話をすると、「システムを導入することで私たちの仕事はなくなりますよね」と思っている方も多いのですが、実際には運用は必須です。
ええ、運用の一部が自動化されることはあっても、エラーを検知して対処するのは人間がやることです。これはIT部門の人だと理解してもらいやすいことではあるんですけどね。
いざ導入してみたらエラーが出てしまい、あたふたしてしまって深夜まで対応する企業さんが多いようです。ツールのエラー対応というのは人事部のコア業務ではありませんから、時間の無駄になってしまうわけですね。そうして、「やっぱりツールじゃダメだ」ということで使われなくなってしまうケースがあるのです。
そうです。どんなツールでも運用は絶対にゼロにはならないわけですから、運用の部分は外に出したほうがいいでしょう。
ええ、成果を出している企業さんに共通する要素の一つが、そこですね。
それでは、これまでの対策をまとめてみましょう。
▶新しいテクノロジーを積極的に受け入れる
▶業務管理のトレーニングをし、ツールを導入する目的を知る
▶中立の判断軸を持ってツールを選定してくれる会社に相談し、一緒に考える
▶運用の設計をしっかり行ったうえで、フレッシュなデータで運用する
▶ツール導入後の運用は、運用が得意な会社に任せる
これらを参考にしていただきながら、ツールの導入を検討してみてください。
そして最後に、礒さんが所属するキャプランで行っているサービスについても、特徴を交えながらご紹介させていただきましょう。
・お客様のご状況に合ったツールをご提案します。
・「入れたいツールがある」と言われたとしても、その企業様に合わなければ提案しないこともあります。
・ひとつのソリューションだけで長く続けていくこともありません。ツールはお客様の事業状況を踏まえて変えていくものですので、柔軟なご提案をさせていただきます。
・導入にあたっては、納得いくまで一緒に設計を行わせていただきます。
・これまで50社以上の豊富な導入実績がございます。
・人事の皆さまに負担をかけない長期的な運用を視野に入れた設計を行います。
・障害申告や操作方法などの一般的なお問い合わせに対応いたします。
・運用開始後に発生する設定変更、管理業務の代行など様々なサービスを提供します。
・ツールは導入して終わりではありませんので、しっかりとした運用に注力しています。
・これからツールを使う方に向けて、目的にフォーカスしたトレーニングを実施します。
・定着化のために、運用管理者に向けたトレーニングも実施します。
・教育研修の実績も豊富ですので、トレーニングを得意としています。
https://www.pasonagroup.biz/service/work-management
以上、ご覧いただいたようにパソナグループのキャプランでは、導入前の設計やトレーニング、そして運用の定着化の支援にいたるまで、お客様の状況に合わせた最適なソリューションをご提案することが可能です。
ご相談だけでも構いませんので、まずはぜひ一度ご連絡くださいませ。
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