2022年11月15日 08:00 #健康経営
経済産業省が2014年度から実施している「健康経営度調査」に参画する企業は、業界問わず年々増え続けており、令和3年度は2,869法人にも上ります。
しかし、調査への回答は増える一方で「健康経営度調査とは具体的に何なのか?」「自社にとって必要なのか?」など、調査に対する理解や取り組みに、課題や疑問を抱える経営者・担当者も少なくないようです。
本記事では、押さえておきたい健康経営度調査の意味・目的、企業が取り組むメリット、健康経営度調査の最新情報などをわかりやすく解説します。
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「健康経営度調査」とは、経済産業省が2014年度から開始した調査です。
企業の健康経営の取り組みの実施状況・経年変化を分析し「健康経営銘柄」の選定や「健康経営優良法人(大規模法人部門)」の認定に必要な基礎情報を収集することを目的としており、毎年8~10月ごろにおこなわれます。
そもそも「健康経営」とは何でしょうか?
「健康経営」とは、従業員の健康保持・増進への取り組みが「将来的な業績向上・株価向上などにつながる投資」であるという視点から、従業員の健康管理を戦略的に実践する経営手法です。
もともとは、米国の経営学・心理学の学者であるロバート・H・ローゼン氏が1992年に著書「The Healthy Company」で提唱した概念です。米国には日本のような社会保険制度がなく、従業員の医療費増額が経営に大きな打撃を与えることもあり注目されました。
また、1万ドルの投資の1999年と2012年の株価を比較した調査研究[1] において、米国の優良健康経営表彰企業が、S&P500(スタンダードアンドプアーズ500株価指数:アメリカの大企業平均)を上回るパフォーマンスを出したこともあり、健康経営は業績向上や企業価値向上につながる経営手法として認識されるようになりました。
このような背景があり、日本でも2000年代後半から大企業を中心に健康経営に取り組む企業が増え続けています。
企業にとっては、従業員の健康保持・増進へ取り組むことで労働災害が減少し、医療費の削減につながるだけでなく、求職者や社会からの信頼度が向上し収益向上などにつながる好循環が期待できるので、未来投資戦略であると言えるでしょう。
健康経営銘柄とは、政府の「日本再興戦略」という成長戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つであり、戦略的に優れた健康経営を実施する東証一部上場企業を「健康経営銘柄」として選定し、投資家に対して「長期的に魅力がある銘柄」として広く紹介する制度です。
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健康経営銘柄に選定されるためには、健康経営度調査への回答が必要になります。回答した企業の中から、経済産業省と東京証券取引所が「経営理念・方針に健康経営を位置付けているか」「健康経営の組織体制があるか」「健康経営の制度構築、施策などの取り組みを実施しているか」「健康経営の取り組み・施策を評価・改善しているか」「法令を遵守しているか」などの視点で銘柄を選定します。
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健康経営優良法人認定制度とは、日本健康会議が促進する、健康増進への取り組みをもとに優れた健康経営を実践する企業を顕彰する制度です。認定されると「健康経営優良法人ロゴマーク」が名刺や販促物、求人広告などに使用できるため、ステークホルダーから社会的な評価を得られやすくなります。
大企業向けと中小企業向けに分かれており、大規模法人部門では、特に優れた戦略的健康経営をおこなっていると評価された上位500法人に対し「ホワイト500」という冠が付加されます。なお、健康経営優良法人(大規模法人部門)の申請にも、健康経営度調査への回答が必要です。
健康経営が企業経営戦略の一つとして重要になっている昨今。今まで以上に従業員に対する健康管理・健康増進の対応が求められている中で、産業保健師の活用が進んできております。
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経済産業省の健康経営度調査の目的は「健康経営への取り組みを企業がどのように実施しているか」「経年変化はあったか」などの状況分析です。また、大企業を中心としたリーディングカンパニーや、中小企業の健康経営への取り組み状況を分析し「健康経営銘柄の選定」や「健康経営優良法人(大規模法人部門)」を認定するための情報を取得することも目的となります。
また、企業側にも健康経営度調査へ回答するメリットは多々あります。
健康経営度調査の回答に対し、専門家から「フィードバックシート」が各企業に送付されます。「総合評価」「経営理念・方針」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」などの評価項目があり、取り組み状況が偏差値や表・グラフで示されるため、客観的な視点で自社の健康経営を把握でき、今後取り組むべき施策などが明確になるでしょう。
健康経営度調査への回答を社内外に告知することで、健康経営に本気で取り組んでいる姿勢を明確にアピールできます。従業員の健康維持や職場環境の改善に積極的に取り組む会社としてブランドイメージが向上すれば、社会的信用や信頼度が高まり、働きやすい会社として離職率が低下したり、人材獲得の際に有利になることも見込めるでしょう。
もし、健康経営優良法人に認定されれば、米国の事例のように株価にも好影響をもたらす可能性もあり、投資効果は大きいといえます。
令和4年度における健康経営度調査の回答期間は、2022年8月22日から2022年10月14日でした。今回も「健康経営銘柄2023」「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」の認定を目指して、多くの法人の申請が見込まれています。
令和4年度調査では、主に以下3点の変更がありました。
人的資本に関する情報開示の動向などを踏まえ、健康経営度調査のフィードバックシートに「経営層のコミットメント」や「施策のアウトプットに関する定量的な情報」が追加されました。
健康経営における効果の可視化を促進するため「アブセンティーイズム(傷病欠勤)」「プレゼンティーイズム(出勤しているが健康上の問題で業務パフォーマンスが完全ではない状況)」「ワークエンゲージメント(仕事に対しポジティブで充実している状態)」における、経年変化や測定方法の開示についての設問が追加されました。
従業員の「ヘルスリテラシー」の向上を促進するために、健診情報などを電子記録で閲覧できる環境整備への取り組みが評価の対象に追加されました。また、保健事業の効果的・効率的な実施のため、40歳未満の従業員の健診データの提供についても新たに設問が追加されました。
健康経営度調査に回答すると、自社の健康経営の取り組みの客観的な評価や今後の施策へのインサイトを得ることができます。
例えば、健康経営度調査のフィードバックシートの「欠勤率」「休職者数」「離職率」の数値の変化を見ることで、現在の状況が良いか否か捉えられるでしょう。調査に回答することで、自社の健康経営の状況・取り組みの成果を毎年検証することができます。
また、経済産業省は令和3年度から「健康経営の取り組み状況や成果をステークホルダーに対し積極的に開示することが重要である」という考えのもと、公開に同意した企業の健康経営度調査フィードバックシートをWeb掲載しています。多くの企業の具体的な健康経営の取り組みが閲覧できるため、他社と自社を比較分析したり、他社の優れた施策を自社に取り入れたりすることができます。
健康経営度調査に回答することで、自社の健康経営の目標までの距離、具体的に何をすればよいかが見え、現時点の実情に合った施策が立てやすくなることは大きなポイントです。
「健康経営」とは、従業員の健康保持・増進への取り組みが従業員の心身の状態を健やかに保つだけでなく、長期的には生産性向上や株価向上につながるという視点から戦略的に健康管理に取り組む経営手法です。
一方「健康経営度調査」とは、経済産業省がおこなっている調査であり、目的は企業の「健康経営」の実施状況・経年変化を分析し「健康経営銘柄」の選定や「健康経営優良法人(大規模法人部門)」の認定のために必要な基礎情報を収集することです。
企業は、健康経営度調査に回答すると、専門家による詳細なフィードバックが得られ、自社の健康経営の状況を客観的に把握することができます。加えて、健康経営度調査への回答を社内外のステークホルダーにアピールすることで、ブランドイメージ向上、人材獲得上の優位性、株価へのポジティブな影響なども期待できるなど、さまざまなメリットがあります。
健康経営に関連付けた目標を設定し、計画的に取り組みを進めていきましょう。また、そのプロセスや成果を、健康経営度調査を通じて社内外に周知し続けることがポイントです。
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