パワハラ防止法とは?中小企業も2022年4月から対象に!パワハラの定義や事例をご紹介

個人の人格や尊厳を傷つけ、職場環境を悪化させる「パワハラ(パワーハラスメント)」。

誰もが快適かつ安全に、生き生きと仕事ができる職場環境をつくるには、パワハラ行為を許さない、また発生させない取り組みが必要です。

この記事では、2022年4月から中小企業も対象となった「パワハラ防止法」の概要とともに、パワハラの定義や職場での具体的な事例をご紹介します。

 

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■パワハラとは?

■パワハラ防止法とは?

■職場のパワハラ事例

■パワハラ防止に必要な対策とは?

■まとめ

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■パワハラとは?

厚生労働省委託事業として2020年に実施された職場内のパワハラに関する調査(※1)によると、過去3年間にパワハラを受けたことが一度以上あると答えた社員は31.4%でした。誰もが当事者になり得る社会問題として深刻化するパワハラとは、具体的にどのような行為を指すのでしょうか。

 

(※1)厚生労働省|令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査 主要点

 

●パワハラの定義

パワハラとは「パワーハラスメント」を略した言葉で、厚生労働省の資料ではパワハラの概念を以下のように定義しています。

 

同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為

 

出典:厚生労働省|職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会 報告書

 

パワハラは上司から部下におこなわれる行為に限らず、先輩・後輩や同僚との間など、あらゆる関係でおこなわれた行為が対象となります。ただし、業務上必要かつ相当な範囲でおこなわれる適正な業務指示・指導であれば、パワハラには該当しません。

 

●パワハラの行為類型

 

パワハラに当てはまる代表的な例としては、以下の行為類型が挙げられます。

 


 

出典:あかるい職場応援団(厚生労働省委託事業)|NO ハラスメント

 

■パワハラ防止法とは?

パワハラ防止法とは「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇⽤の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(労働施策総合推進法)を改正したものです。2020年6月1日にパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)として施行され、大企業の事業主に職場でのパワハラ防止対策が義務付けられました。中小企業においては2022年4月1日より義務化、それまでは努力義務となっています。

 

パワハラ防止法により、事業主に講ずべき措置として義務化された具体的な内容は以下のとおりです。

 

1.       事業主の方針の明確化と周知・啓発

2.       相談(苦情を含む)に適切に対応するための体制整備

3.       パワハラ事後の迅速かつ適切な対応・ケア

4.       相談者・行為者などのプライバシー保護とその旨の周知、

パワハラ相談を理由にした不利益な取り扱いがされない旨の周知・啓発
 

パワハラ防止法違反に対する罰則は現在設けられていません。ただし、厚生労働省がその必要を認めるときは、事業主に対して助言や指導、勧告をおこなえます。さらに勧告に従わない場合には、社名やパワハラの内容などが公表される可能性もあります。

 

■職場のパワハラ事例

パワハラ防止法の施行により、大企業のみならず中小企業も対策を講じる必要がある職場でのパワハラ。これまでに問題となったパワハラ行為には以下のような事例があります。

○事例1

社員Aの営業成績が上がらないことを理由に、職場内で優位性を持つ役員Bがパワハラ行為をおこなった事案。Bは会議で怒鳴りながらAに対し灰皿を投げつけ「早く辞めろ」などの退職強要・脅迫ともとれる発言をおこなった。また、他の社員の面前で侮辱し、退職を迫った。

 

○事例2

席替えなど一連の行為が社員Cを孤立・退職させるための嫌がらせと判断された事案。Cが上司Dと男女関係にあるという事実無根の噂が流されたが、社長E・専務Fともに改善措置をとらなかった。また、Cの担当業務が多忙を極め、人員補充を求めたにもかかわらず周囲に支援させず、職務を解いた後は資材置場として使用されていた席への移動を命じた。

 

○事例3

社員Gが同じ会社の社員Hからパワハラ行為を受けた事案。HはGの直属の上司ではないものの、社内においてはGよりも優越的な地位にあり、日常的に指揮命令をおこなえる立場にあった。その立場を利用し、業務上必要がない電話を深夜にかける、お茶出しのタイミングやタクシーの手配方法が悪いと他の社員の面前で怒鳴りつける、役員や同僚らの前で「能力がない」「明日から辞めてしまえ」と激しく叱責するなどのパワハラ行為をおこなった。

 

■パワハラ防止に必要な対策とは?

すべての企業に発生する可能性があるパワハラ問題。

共通の課題ともいえる職場のパワハラ防止に必要な対策には以下が挙げられます。

●パワハラの定義を理解する

どのような職場環境で、どのようなパワハラ行為が発生しやすいのかを知る

●自社の実態を把握する

パワハラの定義と自社の実態を照らし合わせ、社内アンケートなどを活用しながら改善すべき点がないか検証する

●パワハラの予防策を講じる

パワハラ防止法をもとに、自社のパワハラ防止ルールや規定を定める

●社員への教育・周知をおこなう

パワハラに関する研修プログラムやセミナーを取り入れ、定期的に社内教育を実施する

トップからの啓発・周知を徹底し、パワハラ予防・防止策を職場全体に浸透させる

●相談・解決の場を設ける

企業内外の相談や苦情に対応する相談窓口を設置する

事案によっては産業カウンセラーや弁護士など専門家と連携して解決にあたる

●再発防止の取組

発生した事案が解決した後も、相談者へのフォローや再発防止の取り組みをおこなっていく

パワハラ行為を職場全体の問題ととらえ、自社方針の再確認やルールの見直し、社員への周知をおこなう

 

職場のパワハラ防止には、社員一人ひとりが互いの価値観などの違いを受け止め、人格を尊重し合うような風土の醸成が必要です。そのためには、組織全体で適切なコミュニケーションをおこなうよう努力すること、問題を見逃さず互いに支え合う気持ちを持つことが大切です。

 

■まとめ

パワハラ(パワーハラスメント)とは、優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた、労働者の就業環境が害される言動や行為をいいます。2020年6月に施行されたパワハラ防止法は、大企業の事業主に職場でのパワハラ防止対策を義務付けるものであり、中小企業においては2022年4月から義務化されます。

 

いったんパワハラが発生すれば、関係者へのケアも含め、その解決には多くの時間と労力がかかります。企業としては、まずは問題を発生させないようパワハラの定義を正しく理解し、社員への研修・周知を定期的に実施しましょう。また、社内でパワハラ防止のルールを設け、徹底した予防策を講じることが大切です。

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